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2014年1月26日日曜日

【読書感想】『百年法 上・下巻』著 山田 宗樹

 年に何回かは壮大で厚みのある物語が読みたくなります。読むのに時間がかかって、登場人物がたくさんいて、その物語における世界が構築してあって、しかも作中で時間経過があるものなんて最高です。

 そんなわけで『百年法』、非常に楽しく読む事が出来ました。


原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。経済衰退、少子高齢化、格差社会…国難を迎えるこの国に捧げる、衝撃の問題作。


 不老不死手術が始まってからの150年間、生存制限法施行から約50年間というスパンで語られる物語は、死生観、独裁政治と民主政治、テロ、親子の絆など、色んなテーマを内包しながらうねり、交わり、着地します。
 フィクションを積み上げて行っているはずなのに、その結果として訪れている世界、ぶつかる問題が、現実に生きる僕らが日々暮らしている世界、悩みと奇妙なくらい一致する。ああ、そうか、僕らが生きている現実だって僕ら一人一人が脳内で勝手に取捨選択とイメージを繰り返して作り上げたフィクションに過ぎないのだ、と認識せずにはいられません。SFという物語が持つ確かな力を感じずにはいられません。

 
 全体にとって利益になる事が必ずしも個人にとって幸福であるとは限らない。また逆に個人にとっての幸福を最優先した結果、全体が瓦解していってしまう、というのは集団の大小に関わらず日々僕らが直面する問題です。個人の時代だ! と持て囃された時代も下火になり、空気を読んで場の調和を見出さない事が大事だというゆとり的思考も散々に否定され、じゃあその先どうしたらいいの? と悩ましい日々を送っているわけですが、物語のように圧倒的な真実と人々の決意による収束が果たして僕らの元にも起こるんでしょうか。


 あと全然関係ないですが、不老不死技術によって人々が老いなくなると、自分のオシメを変えてくれた人と恋愛関係を成就させる事が出来る、という事実に付いて行けず、「あ、俺旧世代だわ・・・」と思わず感じてしまいました。常々自分はどのように新しい価値観に付いていけなくなるんだろうと不安に思っていたのですが、なるほど、そっち方面はありえるわ・・・。


2014年1月24日金曜日

JCMA マジカルアートフォーラム 感想。

 JCMA主催のマジックサークル、一月のイベントはマジカルアートフォーラムという企画でした。マジックの世界では比較的珍しい、トークイベントというものだったのでメモ的な意味も含めて感想でも。



賢人会議・・・公開収録 出演:前田知洋・小野坂東・藤山新太郎・安田悠二・峯村健二・他(敬称略)

 新年のスタートに当たり、マジック界の識者にお集まり頂き、トーク・ショーを行います。 2014年の日本のマジック界を見通し、今後JCMAが、そして日本のマジシャンがいかにあるべきか。 楽しいおしゃべりをベースに、意義あるひとときを参加者と共有したいと思います。 


トークテーマ

「2014年、私が最も注目するコト・モノ・ヒトは・・・」
「日本の国際戦略 マジック先進国ニッポンの夢と憂鬱」
「無料動画配信の功罪 マジシャン受難の時代は本当なのか?」
「マジシャン的マーケティング術、今年のトレンド予報」
「文化あるいは芸術としてのマジックに関わる私たちの仲間意識について」
「指令! ハングリー精神を覚醒させて、学びの方法論を再構築せよ。」
「ところでどちらへお出かけですか? 〜目標を設定しよう〜」
「私の提言2014」
「まとめ 質疑応答」


 トーク内容自体はそのうち今回のイベントを元に冊子が作られるようなので。


 まずはこういったイベントが開かれ、そしてそれを目的に来る人達がちゃんといる、という事自体大変嬉しく思います。いやはや、うちの業界の未来は明るいね!

 と最近マジック業界に対して楽観的且つ割かし希望を見いだしております。ここ7年ほど閉塞されていた扉をアタイ、ついに開いたよ! って感じ。

 今回のようなパネルディスカッションってその昔藤山新太郎氏がSAM Japanという大会を運営していた時に「マジッククラブの正しい運営とは?」といったような、かなり絞ったテーマで行われていたように思いますし、マジックランドから若手マジシャン(前田知洋氏、ヒロサカイ氏あたりが出てた気がする)対談集的な冊子が出されていたような記憶もありますので、まあ昔からポツポツとはこういう試みはあるようです。なかなか継続はされていないような気がしますが。
(まったくの余談ですが、SAM Japanのコンテストで第一回目のステージ部門優勝者がカズ・カタヤマ氏である事はたまに語られますが、SAM Japan 最後の大会のステージ部門優勝者が戸崎拓也氏である事は一向に語られませんね! うん、ごめんね俺で!)


 実際問題、パネリスト5人で、トークテーマも広く、時間的な問題もあってかあまり深くつっこんだトークが繰り広げられなかったような気がするなぁというのが正直な感想です。僕が個人的にやってる対談だと、一人相手に一つのテーマを掘り下げるスタイルなので、余計にそう感じちゃってる気がするだけなのかもしれませんが・・・。


 でも逆にこういうイベントとか企画が増えてくるとそういう棲み分けが自然と出来るようになってくるのかもしれませんね。雑誌と書籍の関係のように、色んな人、色んなテーマを少しずつ聞けるのと、特定の人のかなり絞った話をじっくり聞けるのと。トークイベント自体があまり開かれない現状だと、なかなかそこまでの事は難しいのかもしれませんが、いやはやでも、現在は何はともあれ何かを企画し、きちんと開催する、という事を一つ一つやっていくべきなのでしょう。一年に一回くらいはJCMAでこういうイベントあるといいなー。


2014年1月22日水曜日

【読書感想】『四畳半神話体系』著:森見登美彦

『夜は短し』の時にも感じた事ですが、まず中村佑介 さんの表紙イラストがずるい、ずるすぎる。あまりにも良い仕事しすぎです、中村さん



内容紹介(Amazonより)
 妄想してないで、とっとと恋路を走りやがれ! 私は冴えない大学三回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。できればピカピカの一回生に戻ってやり直したい! 四つの平行世界で繰り広げられる、おかしくもほろ苦い青春ストーリー。


 奇妙な文体、多様されるコピペ。怠惰で、非生産的な、あまりにも魅力的な四畳半での大学生活。こんなもんを会社から帰った平日の夜に読むものじゃないです。剣と魔法の世界とか、科学が発展しすぎた未来とか、そういうファンタジーよりもよほど自らの現実逃避力が高められてしまいます。

 人生には無限の選択肢があって、でも実はそのどれを選んでもさしたる違いはないという、ある種救いのない話しではあるのですが、主人公が後悔し、ぶつくさ言いながらなんとなく過ごすその些細な生活が、実に眩しく、羨ましく感じられます。タイトルも似てるのでついつい高野秀之の『ワセダ三畳青春期』を連想してしまいましたが、貧乏暮らししながら非生産的な日常を送る大学生というのは、どうしてこうも魅力的に見えるのか。

 よくよく冷静に考えてみると、実は大した事を描いていない作品のようにも思えるのですが、素敵で素晴らしい読書体験でありました。実際なんなんだろうかこの話。友情の話、なんかな。

 

2014年1月6日月曜日

心の余裕、の話。

 先日、業界の大先輩と話している中で、「マジックを純粋に楽しんでくれる人って、やっぱり心に余裕のある人が多いよね」という話を聞いて、ああ、確かにその通りだと思いました。


 いかんせん手品を演じる側の知り合いばかりが多いので、「いやー、この前のこれがすごくウケて」という話は日常的に聞くし、実際にその現場に立ち会ったり、あるいは自らが演じてそうした”ウケ”をもらう事があります。

 
 ついついそこで思考停止してしまっていたのですが、自分を観客に置き換えて「はたして俺は人の芸を見て、それほど純粋に楽しむ事が出来るが出来るんだろうか」と思った時、僕らが常日頃目にしていたお客さんというものは、もしかしてものすごい人達なのかもしれない、と思いました。

 こと現在の日本において、「手品が好きだor興味がある」という事は≒で「自らも手品をしている」事だと僕は思っています。もちろん多くの例外はあるでしょうし、そういう図式じゃダメだ! と思っているのですが、まあでも実感として。仮に手品好きを10段階として、5より上の人が手品を自ら演じるとしましょう。
 そうなるとお客さんというものはみんながみんな、手品好きレベル4以下なわけです。当然その人には他にもっと好きな、好きレベル8とか9とかの物事があるはずです。
 にも関わらず、お客さんは全身で喜んでくれ、惜しみない拍手をくれ、笑顔で帰路につき、下手をしたら後日友達に「この前こんなマジックを見た!」と話までしてくれる。この純粋さ、余裕、ありがたさと言ったら!

 じゃあ、自分は、好きレベル4以下の物事に対して、こんな風に接する事が出来るんだろうか。興味の無さを露見したり、斜めにかまえてみたり、「まあそれなりに面白かったよ」だなんてひねくれた感想をもらしていないだろうか。


 自分の周囲で起こる事にちゃんと好奇心を持ち、そしてそれを純粋に楽しむ事が出来る。それは確かに心の余裕だと思いますし、何かに没頭し、それを表現してくれる人への礼儀と尊敬の念の表れでもあるように思います。表現をする人間は、幸運にもそういう人達に出会い、触れる事が出来る。であるならば、自らもそういう人間になれるよう、目の前のお客様から学ぶ必要があるんだよなと、そう思った次第。



2014年1月5日日曜日

【読書感想】『シアター! 』著:有川浩

 本というのは全てに価値がある。だから面白くないと思ったら、読むタイミングが間違っていたり、自分がその本のターゲットではないだけなんだ、というような話を聞くと確かにその通りだなと思います。学生時代みたいに目につくもの手当たり次第読んでそれで十分に満足出来るような、時間も感受性も衰えている昨今、適切なタイミングで適切な本を読む機会を一つでも多く作りたいなぁと思っている次第です。

 
 そういった意味でいうと、まさにベストのタイミングで読めたのがこの「シアター!」であったように思います。年末年始で「よし、今年はショーを定期的に開催しよう!」と思い始めていて、そうした具体的な動きをしているorしようと思っている人間にとって、この物語はとても価値があるもののように思います。

あらすじ

小劇団「シアターフラッグ」―ファンも多いが、解散の危機が迫っていた…そう、お金がないのだ!!その負債額なんと300万円!悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるのだが…。



 言ってしまえば劇壇版「もしドラ」なんですけども。物語の為にデフォルメされながらもイメージ通りの小演劇という世界が本当に面白く、また身につまされる思いです。著者の有川さんがあまり演劇という文化に触れてこないで、この本の為に取材したというのが、逆に生きていたように思います。変に演劇にこだわりがあったら多分こうは書けない。

 収益率の悪い劇団の立て直しストーリーなので、今年ゼロから始めようと思っている僕の現状とは違う所も多いのですが(シアターフラッグは既に一公演で1500人くらい集めてる)、いやはやでも、やる気とか高揚感とかそういうものをもらいました。そしてなんだか演劇が見に行きたくなる本ですね。