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2013年11月24日日曜日

『手品で稼ぐ10の方法』1−1

 ちょうど入学式のシーズンだ。今年の桜前線は少し早くに来てしまったようで、花びらはもうある程度落ちてしまっている。キャンパス内は僕の記憶通り、なんだか新学期に浮かれているようで、誰もここを勉強したり研究したりするのが主な目的の場所だとは思わないんじゃないか、などと思う。


 早瀬さゆりとは学食で待ち合わせをしていた。この大学には学食が3つあって、それぞれ運営母体が違うそうなのだけど(詳しくどこが運営しているのかまでは残念ながら把握していない)、その中で一番オシャレで一番料理の量が少なくて一番値段が高い、在学中にあまり足を運ばなかった学食をさゆりは打ち合わせ場所として指定してきた。くそぉ、花の女子大生めが。


「というわけで、何か面白い活動をしてる知り合いのマジシャンを紹介してほしいんだよね。」

 一通り社長との話を説明し、僕はさゆりに今回の件を依頼する。そういえば大学に通っていた頃も、ノート見せてほしいだとか代返よろしく頼むだとか、僕はさゆりにお願いばかりしていたような気がする。

「面白い活動ねぇ・・・。というかさ、面白い活動って言うけど、まずマル君は普通の活動をしてるマジシャンがどういう事をしてるのか知ってるの?」

 前は腰くらいまで伸びていた髪が、肩に少しかかるかどうか程度に切られていた。一年振り、という時間経過もあってかなんだか知らない子と話しているような、変な緊張感がある。

「え、普通って、そりゃなんか舞台上で鳩なんか出してるんじゃないの? あとほら、美女を箱に入れて剣指したり。」

「マル君、どこかでそーゆうのって見た事ある?」

 なにやらさゆりはニコニコしている。いたずらの準備が整い、親が困るのを想像している子供のようだ。

「えーと、ハワイ行った時にホテルでマジックショーやってた気がするけど・・・。日本で見た事ないな・・・。なんかテレビでは見た事あるような気がするけど。」

 さゆりはいつの間にか取り出したトランプを丁寧に混ぜ始める。爪のネイルアートの模様が一本ずつ微妙に違う事にその時初めて気がついた。

「うん、そういうもんだよね。マジックってみんな知ってるし、喩えとかフィクションの題材になったりもするし、マジシャンが輪の中にいると「見せて!」とか「見たい!」って言われるんだけど、実態はものすごくマイナーなサブカルチャーなんだ。」

「サブカルチャー・・・。」

「そう、だからマジックを演じる事で報酬を得て、ちゃんと生活してる人って、多分想像してるよりずっと少ないと思う。」

 さゆりの手の中でトランプがいくつもの山に分かれ、そしてまた一つの山に戻る。トランプはまるで意思を持っているかのように自由に動き、そこには若干のコミカルささえある。小さい頃見た不思議の国のアリスのトランプ兵を彷彿とさせる。さゆりは少し寂しそうな顔をしている。

「今までのマジシャンとは違う、面白い活動をしているマジシャンは少しずつだけど出てきてるよ。でもそれは、普通の活動の方に閉塞感が出てきてるからっていうのが正直な所だと思う。」

 特別何も考えずに今回の仕事を引き受けた僕は、特に言うべき意見を持ち合わせてはいなかった。それでもさゆりの言いたい事はなんとなく僕自身にも理解が出来て、なんとなくで引き受けたこの仕事は、社長の言う通りマジシャンだけに特有の事ではなくて、他の全ての業界の人間にとっても何かしらヒントになる事なのかもしれない。

「まーでも、とりあえず行こっか! 最初は葉月先輩からかな。」

 いきなり元気になるさゆり。いつの間にかトランプは箱に仕舞われていた。

「え? 行くって? どこに? これから?」

「うん、成田空港!」


(続く)

2013年11月18日月曜日

『手品で稼ぐ10の方法』〜プロローグ〜

「は? マジシャンですか?」

 得意先のIT企業の社長に会いにオフィスまで出向き、あれやこれやと打ち合わせをし、「じゃあまあこの件はこういう事で、あとはよしなに」と話がまとまった所で、社長は実は新しい企画があってさ、と切り出してきた。

「そう、うちの運営するビジネスマン向けのニュースサイトで、マジシャンの特集をやろうと思うんだ」

社長が目をキラキラさせながら言う。社長、といっても社員は5人の小さな会社で、会社、といってもちょっと広いマンションの一室くらいしかない。子供ももう1人生まれるし、そろそろもう少し広い所に引っ越さないあなた? と言って、ちょっとお金を持ってる若い夫婦が越してくる程度の広さだ。とはいうものの、フリーの僕に定期的に仕事をくれる、大事な取引先の一つではある。

「マジシャンですか・・・。なんでまた。」

社長の会社が細々と運営するニュースサイトは、大手ニュースサイトの見出しをとりあえず並べ、端の方にちょこちょこと連載企画があったりなんだかよくわからない自己啓発セミナーの案内があったりするだけの、ほとんど趣味レベルのサイトだ。連載企画の中には社長自ら執筆している「魁! 男の仕事術!」なんてものまであり、もはや誰が読んでるかもわからないし、ましてや採算が採れてるとは思えない。

「実は昨夜、知り合いに誘われてマジックバーなるものに初めて行ったんだけどね、いやぁマジックっていうのは面白いもんでねぇ」

昨夜ってあなた、得意の思い付きですか・・・。

「で、そこでマジシャンに聞いたんだけど、マジックの世界には色んな方法でプロ活動をしている人がいると。演技で飯を食う人、マジックのタネを作る人、レッスンをする人、道具販売をする人などなどなどなど。で、僕はピーンと来たわけさ! いまやビジネスモデルを勉強するならマジシャンに学べ! ってね!」

「はぁ、なるほど・・・。」

なんだか社長のよくわからないやる気スイッチがONになってしまったらしい。ただこの人はこうやってノリとテンションで始めた事で意外となんとかなってしまうから侮れない。

「それで、確かマル君、確か大学の同級生にマジシャンの女の子がいるって言ってなかったっけ?」

ああ、そういうわけか。これでようやく繋がった。

「同級生、って言っても僕はもう大学辞めちゃってますけどね・・・」

「そんな事は関係ないよマル君! 僕の知り合いでマジシャンの知り合いがいるのなんてキミくらいだ! だからこそ、キミにこの仕事をお願いしたいんだ!」

つまりはまあ、社長の会社で運営するニュースサイトで「マジシャンに学ぶビジネスモデル」的な連載企画を始めるので、僕に月に一本、一人のマジシャンを取材してその活動内容を紹介する記事を書いてほしいと、そういう事だった。

「まあ月に一本だからそこまで負担でもないだろうし、それにほら、経費でマジックショーが見れるんだから楽しい仕事じゃないかっ!」

社長はもう有無を言わせない感じで、話を進めてしまった。マジシャンに学ぶビジネスモデル・・・。うーん、そんな記事読む人いるんだろうか・・・。
まあでもそういう感じで、僕は大学を辞めてから一年ぶりに、早瀬さゆりに連絡を取る事になった。








っていう感じの書こうかと思うんだけど、需要あるかしら・・・。